大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)2000号 判決

被告人 羽石秋松 外一名

〔抄 録〕

論旨第一点について。

所論は被告人秋松には殺意がないとし、もつて原判決の事実誤認を主張するのである。しかし原審第三回公判調書に記載されている被告人両名の各供述及び被告人秋松の検察官に対する供述調書を綜合すれば被告人秋松は進の叫び声を聞いて家を飛び出し、進が満とつかみ合いの現場に至るや背後より満を取り押え、これに力を得て被告人進が満の頭部を鉈で斬りつけるのをみながら被告人進と共同し満を殺害せんと決意していたものであり、進と満とを取り違え、進を制止する目的で満を背後より押えたものではなかつたと認められるし、又被告人秋松が満を押えていてその行動の自由を奪いよつて被告人進をして満に対する攻撃を続けさせ、次いで満を押し倒した上、被告人進は満の頭部附近を斬りつけ、更に被告人秋松は進から鉈を取つて倒れている満の頭部などを斬りつけたこと原判示のとおりで原判決には所論の如き事実の誤認はないから、論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は量刑の不当を主張する。しかしたとい不孝の子であり無頼の弟であつても、人の生命を害した被告人両名の責任は軽くはない。殊に被告人進は用便中の満の背後より鉈で一撃し、駈けつけて来た父秋松に於て満を押えているところを鉈で一撃し、馳けつけて来た父秋松に於て満を押えているところを鉈で頭部に斬りつけ、満が倒れたところを更に頭部附近を斬りつけ、父秋松が更に進から受け取つた鉈で満の頭部を斬りつけるなどし、満の頭部の割創十二個に及び、人をして正視するに耐えざる惨状を呈し、よつて満をして脳切断及び脳創により死亡するに至らした残虐さについては被告人両名がその責任を分たなければならない。原判決が被告人秋松に対し懲役三年執行猶予三年被告人進に対し懲役四年を科したのは必ずしも重いとはいえないのである。しかしなお飜つて按ずるに、当審証人金子泰治、同堀江都、同平山清繁、同羽石千代子の供述によれば、被告人両名は本件犯行後平山清繁方を訪ね、後事を託し、同人に伴われて自首するため茂木警察署に向つたが、その頃羽石千代子から茂木警察署に被告人秋松方に「大変な事が起きた」旨電話連絡があり、平素乱暴者の満が何かしでかしていると思つた同署警察官金子泰治、同堀江都の両名が被告人方に赴く途中被告人方より約百米を隔てた石倉橋附近で茂木警察署に向つた被告人等と出会い、被告人等はその犯行を金子、堀江両名に申告したことが認められ、法律上自首したものと解すべきである。然るに記録上は被告人等の自首の事実が明白でなく、却つて同日午後十時過ぎ被告人方に於て緊急逮捕されたこととなつており、原審もこの自首の点につき審理した形跡が認められない。而してその刑の執行を猶予した被告人秋松に対してはともかく、被告人進については右自首の事実は量刑上これを参酌すべきものと認められ、被告人秋松についてはこれを考慮しても原審科刑は相当であるが、被告人進に対する懲役四年の科刑はやゝ重きに過ぎると認められ、論旨は被告人秋松に関しては理由がないが、被告人進に関し理由があり、原判決はこの点破棄を免れない。

(加納 足立 山岸)

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